ご相談事例
次のような、ご相談がございます。弁護士に相談すべきかお迷いでしたらご参照ください。
なお、個人情報保護のため、複数の事例を組み合わせたものです。
◆契約が成立するまでの間 ・賃貸借の仲介で、実際の仲介の対象はA号室です。過去にA号室の直接の上の階で自殺がありました(事故物件、特定募集物件)。 @そのことは告知しないといけないでしょうか。A号室自体は何ら問題ありません。 A仮に告知義務がある場合、告知しなかったとき、どのような問題がありますか、損害賠償のリスクはありますか。行政処分はどうですか。 B仮に自殺があったのが、A号室の隣室の場合はどうですか。 B自殺が1年半前だったらどうですか。 C今回A号室の入居が決まり、この入居者が退去した場合に、次の入居者に対しては、告知義務はありますか。 ※宮崎 裕二、仲嶋 保、難波 里美、高島 博『不動産取引における 心理的瑕疵の裁判例と評価』87頁、181頁(プログレス、2014年)。 ※渡辺 晋『新訂版不動産取引における契約不適合責任と説明義務』725頁(大成出版社、2018年)。 ※宅地建物取引業法35条1項4項5項 「(重要事項の説明等) 第三十五条 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。 一 (略)
二 (略) 三 (略) 4 宅地建物取引士は、前三項の説明をするときは、説明の相手方に対し、宅地建物取引士証を提示しなければならない。 5 第一項から第三項までの書面の交付に当たつては、宅地建物取引士は、当該書面に記名押印しなければならない。 6 (略)」 ※宅地建物取引業法65条1項3項指示処分、65条2項2号・4項2号停止 「(指示及び業務の停止) 第六十五条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許(第五十条の二第一項の認可を含む。次項及び第七十条第二項において同じ。)を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年法律第六十六号。以下この条において「履行確保法」という。)第十一条第一項若しくは第六項、第十二条第一項、第十三条、第十五条若しくは履行確保法第十六条において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項若しくは第二項若しくは第八条第一項若しくは第二項の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。 一 業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき又は損害を与えるおそれが大であるとき。 二 業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき又は取引の公正を害するおそれが大であるとき。 三 業務に関し他の法令(履行確保法及びこれに基づく命令を除く。)に違反し、宅地建物取引業者として不適当であると認められるとき。 四 宅地建物取引士が、第六十八条又は第六十八条の二第一項の規定による処分を受けた場合において、宅地建物取引業者の責めに帰すべき理由があるとき。 2 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。 一 (略) 二 第十三条、第二十五条第五項(第二十六条第二項において準用する場合を含む。)、第二十八条第一項、第三十一条の三第三項、第三十二条、第三十三条の二、第三十四条、第三十四条の二第一項若しくは第二項(第三十四条の三において準用する場合を含む。)、第三十五条第一項から第三項まで、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十一条第一項、第四十一条の二第一項、第四十三条から第四十五条まで、第四十六条第二項、第四十七条、第四十七条の二、第四十八条第一項若しくは第三項、第六十四条の九第二項、第六十四条の十第二項、第六十四条の十二第四項、第六十四条の十五前段若しくは第六十四条の二十三前段の規定又は履行確保法第十一条第一項、第十三条若しくは履行確保法第十六条において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項の規定に違反したとき。
三 (略) 3 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、第一項各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定若しくは履行確保法第十一条第一項若しくは第六項、第十二条第一項、第十三条、第十五条若しくは履行確保法第十六条において読み替えて準用する履行確保法第七条第一項若しくは第二項若しくは第八条第一項若しくは第二項の規定に違反した場合においては、当該宅地建物取引業者に対して、必要な指示をすることができる。 4 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた宅地建物取引業者で当該都道府県の区域内において業務を行うものが、当該都道府県の区域内における業務に関し、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。 一 (略) 二 第十三条、第三十一条の三第三項(事務所に係る部分を除く。)、第三十二条、第三十三条の二、第三十四条、第三十四条の二第一項若しくは第二項(第三十四条の三において準用する場合を含む。)、第三十五条第一項から第三項まで、第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十一条第一項、第四十一条の二第一項、第四十三条から第四十五条まで、第四十六条第二項、第四十七条、第四十七条の二又は第四十八条第一項若しくは第三項の規定に違反したとき。 三 (略)」 ※宅地建物取引業法66条1項9項取消処分 「(免許の取消し) 第六十六条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該免許を取り消さなければならない。 一 (略) 九 前条第二項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき又は同条第二項若しくは第四項の規定による業務の停止の処分に違反したとき。 2 (略)」 ※最終改正平成23年10月26日国土交通省「宅地建物取引業者の違反行為に対する監督処分の基準」10.重要事項説明義務違反
※最終更新日平成31(2019)年4月1日東京都住宅政策本部「宅地建物取引業者及び宅地建物取引士の指導及び監督処分基準」別表第一「重要事項説明義務違反」 ※大阪高等裁判所平成7年11月21日判決・判例タイムズ915号118頁 「宅地建物取引業法三五条一項は、少なくとも次の各号に掲げる事項について」宅地建物取引業者が宅地建物取引主任者をして重要事項として取引関係者に説明すべきことを求めているのであり、又、宅地建物取引業者は、免許を受け、宅地建物取引業者者を置いて物件調査の能力を有しているうえ、取引対象となっている宅地建物についての規制を調査し、取引関係者にこれを説明して不測の損害の発生を未然に防止することを業務の一環としていることからも、同条項所定の「法令に基づく制限で政令で定めるものに関する事項」だけてなく「その他一定の重要事項」についても説明義務を負う場合があると解するのか相当である。」 ※一般論として、心理的欠陥は説明対象に含まれる。 東京地方裁判所平成18年12月6日判決 「一般に,不動産媒介業者は,宅地建物取引業法上,賃貸目的物の賃借人になろうとする者に対して,賃貸目的物に関する重要な事項を告知すべき義務があるというべきであり,賃貸目的物に関する重要な事項には,賃貸目的物の物理的欠陥のほか,賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥も含まれるものと解される」 ※告知義務の対象(本件具体的状況の下では、仲介業者の告知義務違反は否定された事例) 告知義務を負う期間 東京地方裁判所平成18年4月7日判決 「本件自殺は本件建物の屋上から道路上へ飛び降り自殺したというものであって,賃貸目的物とされた本件建物部分で発生したというものではなく,また,本件賃貸借契約が締結されたのは,本件自殺のあった時点から既に1年6か月もの期間が経過した時期であったというのであるから,原告が主張する本件賃貸借契約の目的や,自殺者の属性,本件建物の所在地の属性等を勘案しても,本件建物で本件自殺があったという事実は,社会通念上,賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥に該当するものとまでは認め難いといわざるを得ず,したがって,賃貸目的物に関する重要な事項とはいえない」 「本件建物で本件自殺があったという事実が,社会通念上,賃貸目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に起因する心理的欠陥に該当するものとまでは認め難いといわざるを得ず,したがって,賃貸目的物に関する重要な事項とはいえないことは,前記説示のとおりであるし,原告が主張するような事情があったとしても,これにより直ちに,Aにおいて,本件建物に関して賃借人が本件建物を敬遠する重要な事実が存在することを容易に予測できたものとも認め難いから,本件建物で本件自殺があった事実を殊更調査すべき義務があったものともいえないというべきである。」 ※自殺発生居室の両隣、階下の賃貸にあたり告知義務は否定された事例
東京地方裁判所平成19年8月10日判決 「自殺があった建物(部屋)を賃借して居住することは,一般的に,心理的に嫌悪感を感じる事柄であると認められるから,賃貸人が,そのような物件を賃貸しようとするときは,原則として,賃借希望者に対して,重要事項の説明として,当該物件において自殺事故があった旨を告知すべき義務があることは否定できない。しかし,自殺事故による嫌悪感も,もともと時の経過により希釈する類のものであると考えられることに加え,一般的に,自殺事故の後に新たな賃借人が居住をすれば,当該賃借人が極短期間で退去したといった特段の事情がない限り,新たな居住者である当該賃借人が当該物件で一定期間生活をすること自体により,その前の賃借人が自殺したという心理的な嫌悪感の影響もかなりの程度薄れるものと考えられるほか,本件建物の所在地が東京都世田谷区という都市部であり,かつ,本件建物が2階建10室の主に単身者を対象とするワンルームの物件であると認められること(甲5,6の1・2,弁論の全趣旨)からすれば,近所付き合いも相当程度希薄であると考えられ,また,Aの自殺事故について,世間の耳目を集めるような特段の事情があるとも認められないことに照らすと,本件では,原告には,Aが自殺した本件○○○号室を賃貸するに当たり,自殺事故の後の最初の賃借人には本件○○○号室内で自殺事故があったことを告知すべき義務があるというべきであるが,当該賃借人が極短期間で退去したといった特段の事情が生じない限り,当該賃借人が退去した後に本件○○○号室をさらに賃貸するに当たり,賃借希望者に対して本件○○○号室内で自殺事故があったことを告知する義務はないというべきである。 また,本件建物は2階建10室の賃貸用の建物であるが,自殺事故があった本件○○○号室に居住することと,その両隣の部屋や階下の部屋に居住することとの間には,常識的に考えて,感じる嫌悪感の程度にかなりの違いがあることは明らかであり,このことに加えて,上記で検討した諸事情を併せ考えると,本件では,原告には,Aが本件○○○号室内で自殺した後に,本件建物の他の部屋を新たに賃貸するに当たり,賃借希望者に対して本件○○○号室内で自殺事故があったことを告知する義務はないというべきである。」 ◆賃貸仲介時 ・仲介会社です。貸主との間で、媒介契約を締結した場合、書面作成義務はありますか。 ※宅地建物取引業法34条の2は、売買又は交換の媒介契約の作成義務を定める。 ・仲介会社です。賃貸借契約が成立後、すぐに合意解除又は債務不履行解除されても、報酬請求は可能ですか。 ※賃貸借の仲介における報酬請求権の成立要件は、 @仲介契約の存在 A仲介行為 B委託者と相手方の賃貸借契約の成立 CAとBとの間の相当因果関係
である(渡辺 晋『建物賃貸借』741頁(大成出版社、2014年)。 ◆賃貸借終了時 ・物件オーナーです。入居者が薬物事犯で逮捕されました。賃貸借契約を今すぐ解除したいのですが、できますか。 ・物件オーナーです。建物を改築するために、現在の入居者に退去を求めています。入居者が退去に応じてくれることになりました。後日、揉めないために、明渡合意書を作成したいのですが、作ってくれますか。 ・物件オーナーです。建物明渡しを求め、覚書を結ぶことになりました。建物周辺に残置物が多く残っているとみられます。この場合に、注意すべきことは何でしょうか。
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仲介・媒介について
・宅地建物取引業者が自ら貸主として賃貸する場合、「宅地建物取引業」に該当しない→賃貸業(アパート経営など)は宅地建物取引業法の適用はない サブリース・マスターリース(転貸)も同上 ・宅地建物取引業者の管理業は、「宅地建物取引業」に該当しない→管理業は、宅地建物取引業法の適用はない。 ※宅地建物取引業法2条2号 「宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。」 →宅地または建物の @売買または交換 A売買、交換または賃貸の代理 B売買、交換または賃貸の媒介 ※宅地建物取引業法2条3号 「宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。」 ※宅地建物取引業法35条1項の主体は、「宅地建物取引業者」
※岡本 正治、宇仁 美咲『不動産売買の紛争類型と事案分析の手法』80頁(大成出版社、2017年) ※報酬規制(宅地建物取引業法46条1項2項、47条2号、罰則80条「一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金」) 「(報酬) 第四十六条 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。 2 宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。 3 国土交通大臣は、第一項の報酬の額を定めたときは、これを告示しなければならない。 4 宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、第一項の規定により国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。」 ※宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和四十五年十月二十三日建設省告示第千五百五十二号、最終改正令和元年八月三十日国土交通省告示第四百九十三号) 「第四貸借の媒介に関する報酬の額 宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の一・一倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たつて当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の〇・五五倍に相当する金額以内とする」
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